特許調査だけで十分か?
そもそも特許されるために必要な条件(特許要件)をチェックして下さい。

調査で同じような先行出願がないときでも、特許にならない場合もあります。そもそも特許され得ないものかもしれません。特許されるために必要な条件(特許要件)をチェックしましよう。特に、チェック1、2、3、9などが重要です。
この特許要件の主なものとしては以下のものがあります。
チェック1 特許法が保護する「発明」(自然法則を利用した技術思想)であるか
 発明でないものの例
   金融保険制度、課税方法、遊戯方法などは、人為的な取り決めに過ぎず、自然法則を利用していない。
   心理法則を利用した広告方法などは、生理学上の法則とは異なり、自然法則を利用していない。
   永久機関などは、反復可能性がなく、したがって自然法則を利用していない。
        詳しくは特許庁の「特許・実用審査基準」第1部・第1章「産業上利用できる発明」を参照してください。
チェック2 その発明は産業上利用できるか
   医療方法は「産業上利用」できないものとされている。
   他方、医療装置は「産業上利用」できるものとされている。この「医療装置」には培養された皮膚シートなども含まれます。
        詳しくは特許庁の「特許・実用審査基準」第U部・第1章「産業上利用できる発明」や「「人間を手術、治療又は診断する方法」の審査基準の改訂について」を参照してください。
チェック3 出願前にその発明と同じ技術が世の中に知られていないか(新規性または非公知という)
   原則として世の中にオープンにされたものは特許になりません。特許法は、秘密状態の発明を開示したことに対して与えられるという側面を有するからです。出願人といえども発明に関係する
   製品の販売
   展示(発明の内容が分かる状態で)、
   テレビでの放映(発明の内容が分かる状態で)、
   ウエブ上でのオープン(発明の内容が分かる状態で)、
   研究論文発表
などを行うと、発明が世の中に対し秘密の状態でなくなるので、原則としてもはや特許にはなりません。特に、特許審査上、もっとも影響の大きなものとして、特許出願公開公報の先行出願に記載されているものは、もはや特許になりません(この部分が特許調査でかなりクリヤーできます)。
        詳しくは特許庁の「特許・実用審査基準」第U部・第2章「新規性・進歩性」を参照してください。
もっとも、一部については「新規性喪失の例外」を適用してもらえることがあります。
 すなわち、特許を受ける権利を有する者が試験を行い、刊行物に発表し、電気通信回線を通じて発表し、又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表したときには、6ヶ月以内に手続きをすることで例外にしてもらえることがあります。
        詳しくは特許庁の特許法第30条(新規性喪失の例外)の適用を受けるための手続についてを参照してください。
チェック4 上記3の技術をもとに、いわゆる当業者(その技術分野のことを理解している者)が容易にその発明をすることができたものでないか(進歩性)
   特許審査実務上は、上記3の世の中に知られているもの(特許出願公開公報の先行出願に記載されているもの)を、例えば二つ単に組み合わせたに過ぎないものは特許にならないとして拒絶されます。組み合わせに際し、何らかの困難や工夫、特段の効果などがあれば、進歩性が主張できます。この点は、意見書や補正書で反論する際の争点になります。
  詳しくは特許庁の「特許・実用審査基準」第U部・第2章「新規性・進歩性」を参照してください。
チェック5 他人よりも早く出願したか(先願主義)
   同一の発明が出願されたときは、先に出願したもの(先願)が特許されます。
この先願主義によって後願が排除される(特許にならない)範囲は、先願の請求の範囲です(特許法39条)が、通常は先願が公開されることで明細書等全体が範囲になります(特許法29条の2、先願範囲の拡大)。よって出願は急がなければなりません。
  詳しくは特許庁の「特許・実用審査基準」第U部・第4章「特許法39条」第3章「特許法29条の2」を参照してください。
 (もっとも、出願が完了してしまうと、出願した技術内容を補正することは実質上、ほとんどできません。これを新規事項追加の禁止(ニューマター禁止)といいます。技術内容が十分に記載せれていないと、補正をするときに悔しい思いをします。そして一度、この出願が出願公開されてしまうと、もはや出願人でも別の出願で権利を取り直すことはできません。ですから拙速は取り返しがつかないことにもなりかねません。じっくり出願しましよう。)        
チェック6 公序良俗に違反していないか
  例えば犯罪目的の装置(紙幣偽造装置、金塊密輸用チョッキ、麻薬吸飲具)など反社会的なものは特許になりません。
        
チェック7 (ここは明細書作成後にチェックして下さい)明細書の記載は発明が実施できる程度になされているか
       詳しくは特許庁の「特許・実用審査基準」第1部・第1章「明細書の記載要件」3.2を参照してください。
チェック8 (ここは明細書作成後にチェックして下さい) 通常の請求範囲は複数の請求項を有するが、これら各請求項の内容が「発明の単一性」(または「出願の単一性」ともいう)を有するか
関係のない発明を一つの出願にすることはできません(別の出願にします)。
     詳しくは特許庁の「発明の単一性の要件」の審査基準改訂についてを参照してください。
チェック9出願人が特許を受ける権利を持っているか
     他人がした発明をその人にだまって出願することはできません。自分が発明をしたか、あるいは発明した者から許可を得て出願するか、でなければなりません。また、複数人で権利を持っているときは、全員で出願しなければなりません。
チェック10 (ここは明細書作成後にチェックして下さい)その他の明細書記載要件を見たしているか。
     詳しくは特許庁の「特許・実用審査基準」第1部・第1章「明細書の記載要件」全体を参照してください。