チーズ主要工程の説明

配 乳
 製品規格が基準になりそれぞれの種類別、製品別の配乳脂肪率が定められ、配乳調整は主に、クリーム ・生乳・脱脂乳等が用いられる。

原料乳の調整
 配乳とは、チーズの種類別に製品規格(固形分中脂肪率)を定め、配乳調節にはクリーム・生乳・脱脂乳等が用いられる。
一般に広く用いられているのはピアソンの考案したである。(図解)

牛乳の脂肪率(%)=A             C−B又はB−C
            \          /  (Aの使用量)
                求める 
                脂肪率(%)
            /          \
クリーム、脱脂乳                A−B又はB−A
の脂肪率(%)=C               (Cの使用量)

   (A−B)+(C−B)
 ────────────  ×原料乳量=Aの使用量
      (A−B)
原料乳量−Aの使用量=Cの使用量
 Aを与えられた牛乳の脂肪率、Bを求める牛乳の脂肪率と振定すれば、A及びCを含有る牛乳に対し、 どの程度の割合いでクリームまたは脱胎乳を混合すれば、脂肪率Bを有る牛乳が求められるかを示すことに なる。ここで、求める牛乳の脂肪率を増加させたい場令はAはBより小さく、CはBより大きことが必要で ある。よって、B−AはCの必要量を示し、C−Bは牛乳Aの使用量をす。又、脂肪率を下げたい場合は、A−B は、Cを含む原料の所要量を、B−Cは牛乳の使用量を示す。

問題1.脂肪率3.6%の牛乳と脂肪率0.002%の脱脂乳を用いて脂肪率3.0%の原料乳を100kg調整したい。
         3.6%           2.988
             \      /
               求める
               脂肪率
             /  3.0%  \
         0.002%          0.6

   2.998+0.6          3.598
 ──────── ×100=──────  ×100=16.68kg 脱脂乳量
     0.6                0.6
    
                          100−16.68=83.3kg  牛乳量

殺菌及び除菌
 75℃15秒以上(食品衛生法「63℃30分間又は、これと同程度の殺菌効果のあるも」と規定されている)が 食品衝生法に決められている。牛乳中の有害菌の殺菌効率を高めるることが目的である。しかし、原料乳は 高温(80℃)以上で保持時間を長く要た場合は、レンネット凝固に関与するカルシウムが減少し、凝固作用 を妨げる。更にアルブミンやグロブリンとともに含水量の多いチーズになり、カードテンションを低下する原因 となるので、殺菌は製造標準に基づき慎重に行わなければならない。次に除菌(バクトヒューゲーション)と は、微生物を遠心力で除去する方法である。除菌(バクトヒューゲーション)は、乳成分と微生物の比重差 を利用している。乳成分と微生物の比重は次の通りである(脱脂乳:1.003・カゼイン粒子1.066・細菌:1.07 〜1.13・細菌粒子:1.3〜1.4)この比重差を遠心分離によって、微生物及び細菌胞子を選択的に除去させるには、 牛乳を65〜75℃に予熱して粘度を下げ、9000〜10000Gの遠心力にかけて連続的に分離する。スラッジミルク (微生物の含まれた牛乳)は2〜3%排出されるがこのスラッジミルクは微生物のほかに約15%の高蛋白質が 含まれているので、これを蒸気噴射によって瞬間的に130〜140℃の加熱滅菌を施し、直ちに冷却してチーズ 配乳に還元使用する。
スターター
 スターターは大別して、乳酸菌スターターとカビスターターに分けられ、つくるチーズの種類によって 菌株が異なり、チーズ製造技術上最も重要な工程の一つである。乳酸菌ターターについては、酸生成が主要 目的で風味と芳香の良いものを選択しなければなない。特に硬質チーズの風味的品質はスターターから受 ける影響が大である。なお、酸菌スターターの特性として次のようなことが挙げられる。
乳酸菌スターター
 乳酸を作って牛乳のpHを低くするをことは、レンネット凝固作用やカードの収縮を良好に導き、ホエ ーの排出を容易にする。またカードの弾力牲やカード相互の結着性を良好にする。乳酸の生成が適正に進 めば、製造工程も順削こ進む。尚、チーズ熟成時に有害な微生物の活性を抑制するので、チーズ製造には 活力の旺盛なスターターが要求される。乳酸菌は熟成中に主に蛋白質、僅かに脂肪を分解するが菌の代謝産 物である酵素のほうがチーズ熟成を早め、特有の風味を生成するカが大きいと言われる。
カビスターター
 カビスターターはチーズの蛋白質と脂肪分解により風味形成に大きな影響を与える。カビの菌体外に酵素 を分泌し、この酵素がチーズの熟成の主役を果たす。使用するカビは、純粋なカビで菌糸が短く、二次生長の 少ないものを選び、勿論風味と芳香の良いものが必要である。青カビ系のチーズの場合は、脂肪分解に特有 の刺激味を付与する物を選ぶ。自カビ系のチーズの場合は、脂肪分解のすくないカビを選ぶ。尚、蛋白分解 が緩慢に熟成するカビの方が品質的にはよいチーズが出来る。
塩化カルシウム
 原料乳の殺菌処理に伴いカルシウムの不溶性が増加し、レンネット凝固時にカード形成が抑制されるので、 その補いとして塩化カルシウムを添加する。即ち、レンネット節減と乳固形分の効率的な回収、カードの弾 力牲及び製造工程の短縮を目的としている。又、カルシウムはある種の乳酸菌、特にラクトバチルスの成長 に必要であると言われいる。
硝酸カリウム
 硝酸カリウムが酪酸菌の生育を抑制するのは、硝酸還元酵素(キサンチンオキシダーゼ)によって生成さ れる亜硝酸塩の作用による。硝酸塩はチーズの酸化還元電位を高め維持し、偏牲嫌気牲である酪酸菌の生 育を抑制、域いは遅延させる効果がある。尚、硝酸カリウムのチーズへの移行は、6.5%内外と言われている。
レンネット
 レンニンを主成分とした凝固酵素剤をレンネットと言う。レンニンはカルシウムイオンのもとで作用し、 カゼインカルシウムの網が脂肪球を包んで凝固(収縮)する。レンニンは凝固作用の他に、一部は蛋白質 の分解作用もあり、チーズの熟成にも役立つ。尚ンネット添加後の凝固進度を調査するには、別紙を参照。
カッティング
 チーズの種類により異なるが所定時間内に目標水分を脱水する為にカード粒のサイズ均一にすることが 必要である。カッティング時期はカードナイフのサイズに合せ頃合時期を見出だすことが必要である。 無理なカッティングは脂肪のロスやカードの破砕につながるので、その時期を逃すことなく、適切なカッテ ィングで品質の向上と固形回収率を高めることが技術上必要である。一般的に、硬質チーズはカード粒が小 さく軟質チー程高水分でカード粒も大きい。
撹  拌
 カッティング当初のカードは非常に軟弱で破砕され易く、この時のカード粒には細心の注意が必要である。 前熟を要したカビ添加チーズのカード粒の場合は、カードからホーがある程度抜け、カードが硬く締まるのを 待って撹拌する。通常カードの場合は、カドが結着し易い性質なので、直ぐ撹拌に移り、当初は特にゆるやか な撹拌が必要であ。次第に、カードの収縮状態を見て、撹拌を強め、カードの団粒化防止とカードの脱水を図ら なければならない。
ホエー排除と加温
 ホエー排除は次の作業工程を円滑にする。熱湯で加温する場合のホエー排除量は乳糖量酸生成に影響があ るのでよく考慮して決める。加温に熱湯を加えることを直接加温とって、乳糖及び酸度を希釈し、チーズに マイルドな風味を付与する。一方ジャケットから加温することを間接加温と言い、味をシャープにする。 チーズの種類や品質によて加温方法を選択する。加温温度が高い程、脱水の効率が良い、しかし、急激な 加温はカードの表皮に厚い膜を作り、内部にホエーを滞らせることになる。製品にシャープな味をもたらす ので加温は徐々に行い、標準時間を厳守することが大切である。
カードブロック
 カードとホエーを分離し、カードを結着させカードブロックを作る工程。この工程はチーズの種類によって 異なる。方法としては、バット内にカードを残しマッティングするもの、直ちにカードをモールドに詰めてし まうもの、布袋にカードをつめ、垂するものなどのほかに、カードからエアーを抜く目的で、バット内にカ ードを推積圧搾するもの、カードシンクやヨンギャ又はカードブロッカーなどにカードとホエー移送し、 外圧によってカードを結着させる方法等、いずれもチーズ特有の組織形成を目とされ、型詰め操作や次工程 を容易にする。
チェダーリング
 カードのパッキィング、反転、堆積及び再堆積の総合作業をチェダーリングと言う。この一連の作業はマッ ティング後、約2時間続けられ、チェダーチーズ特有のものである。チェダーリングには次の目的がある。

1 ホエーの排除を規制して水分量を調整してpHをさげる。
2 カード特有のボディーの繊維組織をっくり、尚、発酵ガスや悪臭を除く。

ミリング
 カードミールでチェダーリングを行ったカードブロックを10〜15mm×20〜30mm長方形にカッティングする。 カードブロックをカッティングする直接的な目的は次の通りである。
1 ホエー排除を一層良くする。
2 カード全体に食塩を速くかつ、均一に分配できる。
3 モールドへのカード詰めが容易になる。

カッティング操作による間接的な利点は次の通りである。
1 カードから不快臭を逸散させる。
2 カードを冷却し脂肪の硬化が図れる。
3 カードは必要に応じて温水又は冷水で洗浄できる。
4 チーズの組織は、バットの全ての部分からカード混合することができ、化が容易にできる。

圧搾(プレス)
 型詰めされたカードはプレス機を用いて、チーズの品名に合せた形を造る。圧搾の程度は、チーズの種類 により異なるが、最初から急激な加圧をしない。徐々に行うほうが良い組織のチーズが得られる。硬質系 チーズになるほど強圧になり、長時間を要する。圧搾方法には2段楷あり、予備圧搾は普通20〜30分圧搾し、 モールドよりチーズを取り出して反転し、体裁のよい外観をつくる為にクロース(布)で包み替え本格的に 圧搾する。軟質系チーズは殆ど、プレス機を使用しない。一般には、自重でそれぞれの特徴ある組織を作るた めの温度・時間(保持)が異なるので当然この条件を厳守することが大切な管理となる。
冷却(放水)
 温度10℃所要時間10時間以上冷却されることで乳酸菌による酸生成を抑制し、熟成のコントロールをする。 チーズの硬化を促進し変形防止とクロス剥離を容易にし、表皮を平滑にする。
加 塩
 加塩方法には型詰め直前にカードへ加塩するか、チーズ表皮(リンド)に乾塩を塗布するか、或いは塩水に 深漬する方法が行われている。加塩の目的には、チーズに塩味を付け形成させることである。その他に次の 利点がある。
1 蛋白質の一都を溶かしてカードの密着をよくする。
2 チーズの表面から加塩したものは、熟成初期にはリンド部が濃塩分の為、雑カビ・菌の汚染防  止に役立つ。

3 チーズ中の残存ホエーの排除を捉進する。
4 チーズを硬化させる。
5 乳酸発酵の抑制で熟成のコントロールをする。
  塩分率はチーズの種類により異なるが、大半は1.5〜2.0%である。

予備熟成
 軟質チーズについては、チーズ中の水分をコントロールし、カビチーズ等はカビ胞子の発芽を促進させる。 一方、硬質チーズについては眼の形成を主目的にするものもあり、リンド形成も兼ねている。水分の比較的 多いチーズは、予備熟成の温度(20〜23℃),湿度(90%以上)が高く、水分の低いチーズは温度(18〜20℃), 湿度(85%)と低いのが普通である。
コーティング
 リンデットチーズは乾操によるリンド形成が目的で、通気牲のあるフロマコートを塗布する。リンドが形 成されてからワックスコーティングをして、含水量の調整とカビの発生を阻止する。
フィルム包装
 リンドレス包装用フィルムにチーズを入れ、空気(酸素)を脱気しフィルムとチーズのリンドを密着させ る。特にサイドはチーズとフィルムに隙間を残さないことが、カビの発育阻止に役立つ。カビで熟成させる チーズの場合は、カビが発生した後、カビの抑制を図る必要がある。それにはポリプロピレンフィルムのよ うに熱収縮の少ないフィルムがよい。包装後は酸素の供給を制御して、カビの発育をコントロールする方 法がとられている。方法としては、包装後ガスを排出させる小孔をフィルムにつくることである。
本熟成
 チーズの種類によって、それぞれに合せたカード形成と微生物や酵素等が仕込まれてチーズは造られてい る。熟成条件は当然チーズの種類によって異なる。熟成には各種チーズの特質に合せた管理、即ち、温度・湿 度の調整が非常に大切で熟成の可能性を十分に発揮させる技術が必要である。
スターターの活力試験
*倍 地
  1)三角フラスコに、10gの脱脂粉乳をとり、90m1の蒸留水(50℃前後に加温)を用いて、溶解す       る。
  2)ガーゼ二枚でろ過後、試験管に10ml分注する。
  3)試験管に棉栓をし、120℃/10分間蒸気滅菌を行う。これを冷却し保存する。

*培養・活力試験
  1)供試スターターを37℃に予温する。
  2)(1)のスターターを滅菌ピペットで0.3ml採り、培地に接種する。(2本並行する)
  3)37℃で3.5時間培養する。
  4)培養後ビーカーに開け、2.5mlの蒸留水でよく洗い流すくこ回線返す)
  5)N/10NaOHでフェノールフタレン0.5ml(10滴)を指示薬とし滴定する。

*活力の算出
  (1)活力=N/10NaOHの滴定量(m1)×Factor。
  (2)目標活力=3.5m1以上。

レンネットの力価試験
  1.レンネット粉末1gを100mlの蒸留水に溶解させる。
  2.乳酸で酸度を0.17にもに調整した脱脂乳100mlを35℃に加温する。
  3.1のレンネット液0.5mlを2の脱胎乳に添加し十分撹拌後、静直する。
  4.この脱脂乳が何秒で凝固するかを測定し、以下に記す式からレンネットのカ価を算出。

レンネット力価(ソックスレー単位)
    供試乳量      2400秒
 ─────── ×────── 
   レンネット量    凝乳時間(秒)
注:ソックスレー(Soxblet)法は、レンネット力価試験として古くから用いられ、その単位はある 条件下でレンネットが何培の乳を凝固させるかの倍率を示し、2400秒(40分)は、35℃の乳の標準凝固時間 である。
問:レンネット力価試験法により検査の結果15秒要した。このレンネットを使用して10000kgの脱 脂乳に対し、25分で凝固させるのに要するレンネット量はいくらか。
 解:
                  100       2400
  レンネット力価倍率=─────  ×────── =200×16=3200倍
                  0.5       150
   脱脂乳1000kg(1,000,000ml)に対するレンネット液の使用量
   1,000,000ml÷3,200≡312.5(凝固時間40分)
   今、これを25分で凝固させる為に粉末レンネット(Y)は?
   レンネット液は?
                       500
   25x=312.5× 40x=500 Y=───── ×1=5gを要する。
                       100
製造歩留りの算出方法

            生産量
  製造歩留り=──────×100
             配乳量

固形分回収率の算出方法

            歩留り率×(100−グリーンチーズ水分量)
固形分回収率=─────────────────────
                   配乳固形率

固形分中脂肪の算出方法

           脂肪の分析値×100
固形分中脂肪=─────────── 
               全固形分

食塩水の調整

1.処理目標
    乳酸度  0.05%
    比 重  1.16〜1.19%
2.酸度調整
  (1)中和剤 重炭酸ソーダ
  (2)酸度の測定
     重炭酸ソーダ添加後、5〜10分経過したら試料を採って酸度を測定する。
     酸度測定は下記の方法による。
     試 料:9mlに蒸留水30mlを加える。
     指示薬:1%フェノールフタレイン指示薬0.5ml(10滴)を加える。
     滴 定:N/10NaOH溶液。
  (3)殺菌・濾過・冷却
     酸度調整後75℃,15分間保持(又は85℃,15秒)で殺菌後濾過して12〜13℃迄冷却する。

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