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2001.3.13



いやいや昨日は申し訳ない。エネルギーが切れた。(^^;
しかし、その甲斐あって、今日は充電ばっちり。パワー満点気力充実である。
いつものスケジュールに戻って、淡々とやるのである。


さて、一昨日は、単純写真における縦隔陰影の局在診断に役に立つサインを
いくつか挙げて力尽きたのであった。
よって本日は、その続きと言うことで、部位別の縦隔腫瘤性病変の鑑別疾患を
挙げて終わりにする予定なのである。
この辺は、放射線科医にとってはむっちゃ基礎的事項。ただ、この辺を見返して
おけば(特に単純写真とのからみで)試験に役に立つことに相違ないのである。

では早速行こう。
まずは前縦隔。ここにはこんな腫瘤が出来る。

・胸腺腫
・奇形腫、類皮腫、胚細胞腫、胎児性癌、卵黄嚢癌、絨毛癌
・胸腔内甲状腺腫
・悪性リンパ腫
・モルガニー孔ヘルニア
・副甲状腺腫瘍
・カルチノイド
・胸腺嚢胞、心外膜嚢胞
・胸腺脂肪腫、心外膜脂肪
・胸腺癌 ・その他:線維腫、血管腫、リンパ管腫、胸骨腫瘍、腕頭動脈の延長・蛇行、
 大動脈瘤

このうち、胸腺腫、奇形腫・類皮腫・胚細胞腫・胎児性癌・卵黄嚢癌・絨毛癌、
悪性リンパ腫は、英語圏では俗に「4つのT」と呼ばれ、恐れられたり
崇め奉られたりしているのである。崇め奉られはしてねぇか。
ちなみに、胸腺腫がThymoma、奇形腫その他諸々がTeratoid tumor、甲状腺腫が
Thyroid、そしてリンパ腫がTerrible lymphomaなのだそうだ。
何というムリヤリな語呂合わせなのであろう。ひどいよ英語圏。
おかげで、俺はTの4つ目がリンパ腫であることをいつも忘れるのである。(^^;

まぁ、何はともあれ、ひとつずつ行こう。

まずはTのひとつめ、胸腺腫
基本的に胸腺ってのは、子供の頃は大きく、心臓と同じぐらい、あるいは少し
大きいぐらいの横長の長方形なのであるが、10歳を過ぎる辺りに小さな三角形
あるいは矢尻型となり、それからどんどん小さくなっていくのである。
だもんで、赤ちゃんの胸部写真で腫瘤状のものがあると、それは胸腺である
可能性が高い
。気をつけねばである。
で、正常胸腺の話を終わって胸腺腫の話であるが、胸腺腫にはnoninvasive
thymomaとinvasive thymomaがあって
、ってのはいいね?
重症筋無力症の10〜15%に胸腺腫を合併する、ってのもいいね?
メジャーな割には意外と合併例は少ないことは覚えておきたい。
CT所見は、noninvasive・invasiveとも内部均一な充実性腫瘤。ただしnon-
invasiveが辺縁整の円形〜楕円形の腫瘤なのに対し、noninvasiveは辺縁不整の
扁平な腫瘤。また、noninvasiveの方は石灰化は稀なのに対し、invasiveは結構
あるらしい。

では、次のT。Teratoid tumor、つまり奇形腫その他諸々のgerm cell tumorで
あるな。
実は、そのうち90%はいわゆるmature teratoma、つまり成熟奇形腫である。
まずは、その特徴をしっかり頭にたたき込んでおくことから始めたい。
mature teratomaの特徴は、腫瘤内部が脂肪と液体、そして軟部織(時と
して+石灰化)が入り混じっている
、これに尽きる。辺縁は平滑。
これが辺縁不整になって、内部が液体と軟部織であり、胸壁浸潤なんかがあると
inmatuare teratomaってことになる。
その他の、胚細胞腫、胎児性癌、卵黄嚢癌、絨毛癌なんて手合いは、それぞれに
特徴的な画像はないらしいな。内部が比較的低吸収で壁が厚いのが多く、石灰化
を合併するものもあって、そういうのは嚢胞状のmature teratomaと区別が
付きにくいと言う罠。

次のTは甲状腺であるな。これは比較的楽で、腫瘤が甲状腺に連続して
いる
ことと、腫瘤が甲状腺みたいに高吸収であることが証明できれば
いいわけだ。点状・輪状の石灰化をきたすこともある。

そして最後のT。つーかなんでTなのよリンパ腫。(しつこい)
これは通常、invasive thymomaや胸腺癌(あ、胸腺癌の話をしてなかったな。
後でする)との鑑別が問題となってしまうわけである。
あえて「リンパ腫っぽい」所見を挙げるとしたならば、「中央を中心に左右対称」
とか、「造影剤により不均一な増強効果、島状の低吸収域が残る」とか、
そういうところで鑑別するしかないのかね。
あ、あと、もちろん、他部位からの転移も鑑別に挙がるが、そいつはここ局所
だけじゃ鑑別は無理ってもんだ。他に原発があるか調べるのが先決だわね。

ほいじゃ、その他をばばっと。
まずはMorgagni孔ヘルニア。まぁ、胸骨後部に脂肪あるいは軟部織が
あって、腹腔まで続いていれば確定やね。軟部織は肝臓だったり腸管だったり。
ただ、これ、単純写真で当てられるだろうか。というか、前縦隔の下の方の腫瘤
を見たときに、鑑別として言えるだろうか。試験ではその辺も試されるかもな。

副甲状腺腫瘍カルチノイドは、画像上は胸腺腫似。でも稀。
血液生化学所見が頼りになるかもな。ホルモン系。

胸腺嚢胞、心外膜嚢胞。壁が薄い単純性嚢胞であるあたりが、嚢胞性の
teratoma系なんかとの鑑別点らしい。

胸腺脂肪腫、心外膜脂肪。CTで脂肪吸収値。ただ上述のモルガニーとの
鑑別は必要だろうね。特に、右心横隔膜角の部位にある心外膜脂肪は。

そうそう、胸腺癌を忘れてたね。胸腺から出た癌。invasive thymomaとは
別で、ちゃんとした上皮性腫瘍であるわけだ。大多数は扁平上皮癌とリンパ上皮
類似の癌だそうだが。

後の有象無象は稀なんで省略してもいいんだが、ふたつだけ。
リンパ管腫、特に嚢胞状リンパ管腫は、前縦隔のものは胸腺嚢胞と見分けが
つかない場合が。
血管腫は静脈結石があれば確定診断。でも前縦隔血管腫自体が激レア。


といったところで、本日はお開きである。
明日は中縦隔と後縦隔の腫瘍だ。アディオスアミーゴ。


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