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2001.3.14



もしかしたら、これを皆さんが見ていらっしゃる頃には、トクトクのサーバが
死んでるかもしれんな。
それにしても、メンテとはいえ、一週間も連続して止まるってのはサーバ屋と
してどうなのよ、という疑問がないわけではないが、無料で借りているので、
あまり文句も言えないのである。(^^;
というわけで、一週間ほど、皆様にはbiglobeでお楽しみいただきたいわけで
ある。


さて、前回は前縦隔の腫瘤性病変を色々挙げたわけであるが、今日は残りの
中縦隔及び後縦隔腫瘤性病変を流して終わりにしようと思うのである。

まずは中縦隔。ここにはこんなもんが出来てくる。

・悪性リンパ腫
・その他リンパ節腫大(転移、結核、サルコイドーシス、珪肺など)
・気管支嚢胞
・大動脈瘤
昨日と比較して、意外と少ないのである。
そう、この中縦隔で核となるのはリンパ節。それを中心に、あとはbronchogenic
cystや大動脈瘤を考えればいいわけだ。

まず、これがリンパ節腫大ってことになれば、今度はその原因を考えねば
ならない。
その際、胸部単純X線、または胸部CTだけで分かるようなものであればよいの
だが、そうでない場合、それの原疾患を探すために全身検索、って流れになる
わけだ。腫瘍マーカー検査、腹部CT、あと内視鏡はやっておかねばなるめえ。
この辺は放射線科診断医というよりは臨床の先生方の方が得意な分野ではあるが、
試験官の先生にそういった方面を聞かれないとは限らない。余裕で答えられる
心の準備をしたい。
また、胸部単純や胸部CTで分かるような疾患であれば、その読影力が試される。
例えば、サルコイドーシスならば肺門や肺野にも注目すべし。両側肺門リンパ節が
腫れてて、更に肺野病変があればサルコイドーシスの可能性が高いわけだ。
なお、このとき、肺門リンパ節が片方だけ腫れている場合は、サルコイドーシス
の可能性はガタ減りする
ので覚えておこう。片側肺門のリンパ節腫大を伴う
サルコイドーシスはわずか1%に過ぎないのだ。
もひとつ、珪肺ならばリンパ節にegg shell calcification。これも基本である。
リンパ節石灰化は陳旧性結核も念頭に。

次はbronchogenic cystであるな。気管分岐部に好発する。後縦隔に
またがることもあるし、まれに前縦隔に発生することもある。
中身は粘稠な液体が多く、またカルシウムを含むことがあるので、CTで高吸収に
見えたり、MRIでT1WI高信号、T2WI高信号になったりすることが多い。出血が
あれば、理論的にはT2WI低信号にもなり得るな。


というわけで、さくっと中縦隔を終わって、後縦隔である。
ここにはどういうものが出来るかというと‥‥

・神経原性腫瘍
 ・末梢神経から発生:神経鞘腫、神経線維腫
 ・交換神経細胞から発生:神経節腫(ganglioneuroma)、神経芽腫、交感神経芽腫
  (sympathicoblastoma)、神経節芽腫(ganglioneuroblastoma)
 ・傍神経節細胞から発生:paraganglioma、褐色細胞腫
 ・リンパ節(転移性腫瘍、悪性リンパ腫)
・胸腔内髄膜瘤
・大動脈瘤
・脊椎カリエス
・神経腸嚢胞(duplication cyst)
・ボホダレク孔ヘルニア
・食道疾患(食道腫瘍、食道憩室、アカラジア、食道裂孔ヘルニアなど)

というわけで、ここの主役は神経原性腫瘍である。

まずは神経鞘腫。縦隔においては脊髄神経及び交感神経幹の通過する傍脊椎溝に
多く発生する。迷走神経のある食道近傍や横隔膜神経のある心臓側面にも多い。
あと、縦隔からは外れるが、肋間神経由来の神経鞘腫にも注意だ。
形状は辺縁平滑な球形・卵形、椎間孔に出来たらダンベル型。ただ大きくなれば
出血、嚢胞変性などを呈することがある。
神経の側面から発生し、神経線維が圧排されてるのが見えることが多い、って
本には書いてある。
細胞成分が密な「Antoni A型」と、疎な「Antoni B型」って2つの組織型があって
造影CTでAは染まるけどBは染まらないらしい。

次が神経線維腫。これはさっきの神経鞘腫と違って、神経線維そのものが紡錘状
に腫大するんだそうだ。

じゃ、神経節由来のやつに行こうか。まずは交感神経節由来のものとして、
神経芽腫、神経節腫、神経節芽腫(ganglioneuroblastoma)、交感神経芽腫なんて
ものがあってな。
いずれも傍脊柱溝に発生するわけだsが、中でも神経芽腫は悪性で半数以上は1歳
以下、神経節腫は良性で7歳児に好発。神経節芽腫は中間。

最後に傍神経節腫瘍。これはいわゆる神経堤細胞由来の細胞なわけで、場所的には
神経の周りならどこでも‥‥つまり、上記2つの神経原性腫瘍の発生する場所なら
どこでも出るわけだ。
また、上ではフェオを挙げたが、他にもカルチノイドとか、そういう神経堤細胞
由来の腫瘍は出ることが十分予想されるわけだ。


じゃあ、次行こう。duplication cyst。これは後縦隔好発で低吸収の嚢胞性病変
ってとこで既に診断がつくような気もするんだが、もしかしたら嚢胞性壊死を
起こした神経原性腫瘍と鑑別が必要なこともあるかも知れないな。


というところで、本日はこれにて。
ちょっと脂っこい食道と大血管は明日回しと言うことで。(^^;


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