とゆーわけで、休み明けである。 それでもまだ、トクトクはサービスを再開しやがらねえのである。(^^; さて。 本日は大血管であるが、大動脈瘤とか解離とかのメインストリームは明日にとって おいて、今日は、大動脈の発生異常をやるのである。 例えば、胸部CTを見せられて、縦隔に妙な血管がある場合。 そういう場合は、大動脈の発生異常に伴う異常血管を念頭に置く必要が ある。 今日は、その「大動脈の発生異常に伴う異常血管」にはどのようなものがあるか、 そしてそれは、どのように発生するのか。 それが一撃で分かってしまう、ありがた〜いお話である。 何はともあれ、まずは、これを見れ。
ハートに4本の角。
まるで、中世の秘密結社の紋章みたいである。この4本の角がそれぞれ地水火風の 4元素を表していて、とか。信じるなよ。 いや、この怪しげな図形を見て、「ああ、あの話か」とピンとくればオッケー。 この図形は、その昔、エドワーズさんという先生が提唱した仮説に基づいて、 キースさんとロウさんという2人の先生が発表した図であり、胎生期の人間の 心〜胸部大動脈を模式的に表している図なのである。 ハートの一番下から出ている線が下行大動脈、真ん中から下に伸びる線が上行 大動脈である。 上行大動脈から出た血液が、左右2本の大動脈弓を通り、下行大動脈へ抜ける のである。 で、だ。 これが出産間際になると(いや、具体的にいつ頃か、というのはちゃんとあるの だろうが、正確に覚えていない(^^;)、右側の大動脈弓が下図の赤線の場所で 「切れる」のである。
こんな感じであるな。
でもって、
最終的にはこうなるわけだ。
これはおなじみの図。図の向かって左、すなわちこの胎児にとって右から順に、 右鎖骨下動脈、右総頚動脈、そしてその根本が腕頭動脈、そして大動脈弓から 左総頚動脈と左鎖骨下動脈が出て、下行大動脈へ。 これが、胸部大動脈の通常の発生である。 ところがだ。 考えてみると、大動脈弓が「切れる」可能性のある場所は、
上図のように、正常の部位も含め、合計6カ所あるのである。
そして、正常の部位以外で大動脈弓が「切れた」場合‥‥その時に、異常血管が 生まれるのである。 例えば、右鎖骨下動脈の上で切れた場合を考えてみよう。
こんな感じ。
この場合は、最終的には、下図のようになる。
大動脈弓から、まず右総頚動脈が出る。そして左総頸、左鎖骨下と来て、最後に
更に下の方から、右鎖骨下動脈がぐる〜っと回ってくるわけであるな。 これが、俗に「異所性右鎖骨下動脈」と言われる血管奇形である。 それでは、次に、右総頚動脈の内側で切れた場合。
ここだ。
この場合は、こんな風になる。
上行大動脈から、まず左総頚動脈、次に左鎖骨下動脈が分離する。そしてその後、
おもむろに一本動脈が分離し、それが右鎖骨下と右総頸に分岐する。つまり、この 動脈は腕頭動脈であり、よってこの奇形は「異所性右腕頭動脈」と呼ばれて いるのである。 さて、今までは右側の大動脈弓が「切れた」場合の話をしてきたが、当然、数は 少ないながら、通常大動脈弓となるべき左側の大動脈弓が「切れる」場合も あり得る。 それが、いわゆる「右側大動脈弓」であり、さらにその中でも、切れる 場所の違いにより、以下の3パターンに分けられる。 ・異所性左鎖骨下動脈を伴う右側大動脈弓 ・異所性左腕頭動脈を伴う右側大動脈弓 ・なんにも伴わない右側大動脈弓(右側大動脈弓鏡面型) このうち、なんにも伴わない右側大動脈弓には、チアノーゼを伴う重篤な先天性 心疾患(Fallot四徴症とか総幹動脈症とか)が合併することが多いそうな。 さらには、これは究極。「右も左も両方切れない」。こうすると、本当に二本の 大動脈弓が存在することになる。これが「重複大動脈弓」。 二本の大動脈弓は、一本(右由来の)が食道の後を、もう一本(左由来の)気管の 前を通り、後の大動脈弓からは右鎖骨下動脈と右総頚動脈が(腕頭動脈って概念 ないのな)、前の大動脈弓からは左鎖骨下動脈と左総頚動脈が出る。 無症状の場合もあるけど、気管と食道が前後からサンドイッチになるため、喘鳴や 肺炎を呈することがある。確かに苦しそうだしな。 というわけで、大動脈弓の先天異常は終わりである。 明日は、あと3つだけ胸部の先天性血管奇形を紹介して、んでもって大動脈瘤と 解離に行くのである。そして今日はもう寝るのである。(^^; そうそう。21日は休日であり、明日の講座が順調に進めば、お休みをいただく 予定である。が、順調に進まなければ、取り戻すため、休まずやるとする。 |