今日は、内ヘルニアの話である。(えーーーーーーーーーーーっ!?) ま、待て! 俺の話を聞いてくれ! 今日もまた、最後の最後にMRIの難しいやつを引いてしまって、その読影に結構 時間と精神力を費やしてしまったんである。 で、ルーチンワーク終了後に勉強、ってことにしてるので、かなりの遅い時間 なのである。 正直、サボってしまいたい気もしないでもないんだが、とりあえずここで根性は 見せておきたいので、今日はちょいと脱線して、別件で調べた内ヘルニアの話を 流用して、それを本日分とするのである。(^^; まぁ、流用企画にしては勉強になるし、腹部の中でも、下手したら普段あまり お目にかからないところなので、いいんじゃないかと思ってな。 つーわけで、さっそく内ヘルニアだが、ご存じの通り、これは「臓器が正常 または異常な開口部から腹膜腔内へ突出する状態」である。 内ヘルニアの大多数は、腸管の回転や腹膜付着の先天的異常の結果生じる。 また、もひとつ重要なのが、腹部の手術または外傷による腸間膜・腹膜の 後天的欠損でも起こり得ると言うこと。欠損部位がヘルニア門になるわけな。 ちなみに、後腹膜の内ヘルニアは成人に、経腸間膜性のヘルニアは小児に 多い。覚えておくべし。 さて、この内ヘルニアにはいろんな種類があるわけである。その中で最も多いのが 十二指腸傍ヘルニアというやつで、これひとつで内ヘルニアの過半数を 占めるシロモノである。 といっても、十二指腸傍ヘルニアには「左」と「右」がある。 十二指腸左側の「十二指腸傍陥凹」、発見者の名を取って別名「Landzert窩」と 呼ばれる穴に小腸が落ち込むのが左十二指腸傍ヘルニア、同右側の、SMAの後側に ある「腸間膜壁側窩」、またの名を「Waldeyer窩」に十二指腸ごと小腸が入るのが 右傍十二指腸ヘルニアである。 その構造上、このヘルニアが出る場所が決まっている。十二指腸の左または右に 拡張した腸管があれば、やっぱ疑わざるを得まい。また、左の場合はIMV・ IMAのすぐ内側が、右の場合はSMAのすぐ後がヘルニア門となるって のは覚えておいた方がいいだろう。これは穴と血管の解剖学的位置関係から 自ずと決まってくるのである。 あと、今見ている教科書には、左十二指腸傍ヘルニアのCT像が載ってるんだが、 どうも膵と腎の間とか胃と膵の間とか、そーいった妙なところに 腸管がはまり込んで見えるようである。 おっと、大事なことを忘れておった。左は右の3倍多い。つまり十二指腸傍 ヘルニアの75%が左、ってこったな。 次に多いのが盲腸周囲ヘルニア。これが全体の13%っつったか。 読んで字の如く、盲腸や虫垂周囲の腸間膜に穴があいたり、またはここんとこに ある腹膜陥凹に小腸(多くは回腸)が入り込む。入り込んだ腸管は右傍結腸溝を 占拠しちゃうわけだ。 次が8%のWinslow孔ヘルニア。十二指腸の頭側、肝の奥にあるWinslow孔 という穴。ここは腹膜腔と網嚢をつなぐ穴なんだが、そこに腸管が入るわけだ。 典型的には、限局性のガスを含んだ腸管が、胃の内、後方の高位腹部に みられる。小腸が60〜70%。 次は経腸間膜ヘルニア。腸間膜のどこかに穴があく。小児の先天性の 内ヘルニアの中で一番多い。 次がS状結腸間ヘルニア。S字の上と下のカーブ、それとそこに張る 腸間膜との間に出来る陥凹(S状結腸間陥凹)に腸がはまるタイプ、どちらかの カーブに張る腸間膜に穴があき、袋状となった部分に腸がはまるタイプ、そして 両方のカーブの腸間膜に穴があき、小腸が左下腹部に脱出するタイプ。まぁ、 画像でこいつらを鑑別するのはなかなかに大変ではある。 最後に、上記の腸間膜以外の所から脱出する内ヘルニアもある。例えば骨盤部、 子宮広間膜に穴があいて、そこから出るタイプ。こういうのもあるのだ。 珍しいらしいけど。 というわけで、普通にやってるとなかなか勉強できない内ヘルニアの話であった。 明日は骨腫瘍に戻‥‥れるといいなぁ。(^^; |