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 『横笛(大島本)

 この君いたく泣きたまひて、つだみなどしたまへば、乳母も起き騷ぎ、上も大殿油近く取り寄せさせたまて、耳挟みして、そそくりつくろひて、抱きてゐたまへり。いとよく肥えて、つぶつぶとをかしげなる胸を開けて、乳などくくめたまふ。稚児もいとうつくしうおはする君なれば、白くをかしげなるに、御乳はいとかはらかなるを、心をやりて慰めたまふ。
 男君も寄りおはして、「いかなるぞ」などのたまふ。うちまきし散らしなどして、乱りがはしきに、のあはれも紛れぬべし。
 「悩ましげにこそ見ゆれ。今めかしき御ありさまのほどにあくがれたまうて、夜深き御月愛でに、格子も上げられたれば、例のもののけの入り来たるなめり」

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  第二章 夕霧の物語 柏木遺愛の笛  [第六段 夢に柏木現れ出る]

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