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 『葵(大島本)

 「いさや、聞こえまほしきこといと多かれど、まだいとたゆげに思しためればこそ」
 とて、「御湯参れ」などさへ、扱ひきこえたまふを、いつならひたまひけむと、人々あはれ がりきこゆ。
 いとをかしげなる人の、いたう弱りそこなはれて、あるかなきかのけしきにて臥したまへるさま、いとらうたげに心苦しげなり。御髪の乱れたる筋もなく、はらはらとかかれる枕のほど、ありがたきまで見ゆれば、「年ごろ、何ごとを飽かぬことありて思ひつらむ」と、あやしきまでうちまもられたまふ。

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  第二章 葵の上の物語 六条御息所がもののけとなってとり憑く物語  [第五段 葵の上、男子を出産]

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