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 『柏木(尊経閣文庫本)

 宮もものをのみ恥づかしうつつましと思したるさまを語る。さてうちしめり、面痩せたまへらむ御さまの、面影に見たてまつる心地して、思ひやられたまへば、げにあくがるらむ魂や、行き通ふらむなど、いとどしき心地も乱るれば、
 「今さらに、この御ことよ、かけても聞こえじ。この世はかうはかなくて過ぎぬるを、長き世のほだしにもこそと思ふなむ、いとほしき。心苦しき御ことを、平らかにとだにいかで聞き置いたてまつらむ。見しを心一つに思ひ合はせて、また語る人もなきが、いみじういぶせくもあるかな」

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  第一章 柏木の物語 女三の宮、薫を出産  [第四段 女三の宮の返歌を見る]

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