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 『浮舟(明融臨模本)

 「いさや。右近は、とてもかくても、事なく過ぐさせたまへと、初瀬、石山などに願をなむ立てはべる。この大将殿の御荘の人びとといふ者は、いみじき無道の者どもにて、一類この里に満ちてはべるなり。おほかた、この山城、大和に、殿の領じたまふ所々の人なむ、皆この内舎人といふ者のゆかりかけつつはべるなる。
 それが婿の右近大夫といふ者を元として、よろづのことをおきて仰せられたるななり。よき人の御仲どちは、情けなきことし出でよ、と思さずとも、ものの心得ぬ田舎人どもの、宿直人にて替り替りさぶらへば、おのが番に当りて、いささかなることもあらせじなど、過ちもしはべりなむ。

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  第六章 浮舟と薫の物語 浮舟、右近の姉の悲話から死を願う  [第七段 浮舟、右近の姉の悲話から死を願う]

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