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『若菜上(明融臨模本)』
そのゆゑは、みづからかくつたなき山伏の身に、今さらにこの世の栄えを思ふにもはべらず。過ぎにし方の年ごろ、心ぎたなく、六時の勤めにも、ただ御ことを心にかけて、蓮の上の露の願ひをばさし置きてなむ念じたてまつりし。
わがおもと生まれたまはむとせし、その年の二月のその夜の夢に見しやう、
『みづから須弥の山を、右の手に捧げたり。山の左右より、月日の光さやかにさし出でて世を照らす。みづからは山の下の蔭に隠れて、その光にあたらず。山をば広き海に浮かべおきて、小さき舟に乗りて、西の方をさして漕ぎゆく』
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第十一章 明石の物語 入道の手紙
[第二段 入道の手紙]
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