検索結果詳細


 『若菜上(明融臨模本)

 そのゆゑは、みづからかくつたなき山伏の身に、今さらにこの世の栄えを思ふにもはべらず。過ぎにし方の年ごろ、心ぎたなく、六時の勤めにも、ただ御ことを心にかけて、蓮の上の露の願ひをばさし置きてなむ念じたてまつりし。
 わがおもと生まれたまはむとせし、その年の二月のその夜のに見しやう、
 『みづから須弥の山を、右の手に捧げたり。山の左右より、月日の光さやかにさし出でて世を照らす。みづからは山の下の蔭に隠れて、その光にあたらず。山をば広き海に浮かべおきて、小さき舟に乗りて、西の方をさして漕ぎゆく』

 625/887 626/887 627/887

  第十一章 明石の物語 入道の手紙  [第二段 入道の手紙]

  [Index]