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 『浮舟(明融臨模本)

 などよろづに言ふを、「さかしがるめれど、いと醜く老いなりて、我なくは、いづくにかあらむ」と思ひやりたまふも、いとあはれなり。「世の中にえあり果つまじきさまを、ほのめかして言はむ」など思すに、まづ驚かされて先だつ涙を、つつみたまひて、ものも言はれず。右近、ほど近く臥すとて、
 「かくのみものを思ほせば、もの思ふ人の魂は、あくがるなるものなれば、も騒がしきならむかし。いづ方と思し定まりて、いかにもいかにも、おはしまさなむ」

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  第七章 浮舟の物語 浮舟、匂宮にも逢わず、母へ告別の和歌を詠み残す  [第八段 浮舟、母への告別の和歌を詠み残す]

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