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 『日本橋』 青空文庫

 腕白ものの十ウ九ツ、十一二なのを頭に七八人。春の日永に生欠伸で鼻の下を伸している、四辻の飴屋の前に、押競饅頭で集った。手に手にだの、萌黄だの、紫だの、彩った螺貝の独楽。日本橋に手の届く、通一つの裏町ながら、撒水の跡も夢のように白く乾いて、薄い陽炎の立つ長閑さに、彩色した貝は一枚々々、甘い蜂、香しき蝶になって舞いそうなのに、ブンブンと唸るは虻よ、口々に喧しい。

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