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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
「何のお前様、この年になりますまで、孫子の影も見はしませぬ。爺殿《じじいどの》と二人きりで、雨のさみしさ、行燈の薄寒さに、心細う、果敢ないにつけまして、小児衆を欲しがるお方の、お心を察しますで、のう、子産石《こうみいし》も一つ一つ、信心して進ぜます。
長い月日の事でござりますから、里の人たちは私らが事を、人に子だねを進ぜるで、二人が実を持たぬのじゃ、といいますがの、今ではそれさえ本望で、せめてもの心ゆかしでござりますよ。」
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