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『日本橋』
青空文庫
形だけも世棄人、それでこそ、見得も外聞も洒落も構わず、変徹も無く、途中で芸者を見ていらるる。――斜めに向う側の土蔵の白壁に、へまむし、と炭団の欠で楽書をしたごとく彳んで、熟と先刻から見詰めていた。
小笠のふちに、手を掛けながら、
「源吾どの、ちょっと、これへ。……」
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