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『日本橋』 青空文庫
「もしもし、大高|氏、暫時、大高氏。」と大風に声を掛けて呼んだのは、小笠を目深に、墨の法衣。脚絆穿で、むかし傀儡師と云った、被蓋の箱を頸に掛けて、胸へ着けた、扮装は仔細らしいが、山の手の台所でも、よく見掛ける、所化か、勧行か、まやかしか、風体怪しげなる鉢坊主。
形だけも世棄人、それでこそ、見得も外聞も洒落も構わず、変徹も無く、途中で芸者を見ていらるる。――斜めに向う側の土蔵の白壁に、へまむし、と炭団の欠で楽書をしたごとく彳んで、熟と先刻から見詰めていた。
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