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『歌行燈』
従吾所好
と干した猪口で門を指して、
「二三町行つた処で、左側の、屋根の大きさうな家へ着けたのが、蒼く月明りに見えたがね、……彼処は何かい、旅篭屋ですか。」
「湊屋でございまさ、なあ、」と女房が、釜の前から亭主を見向く。
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