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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
爺さんに強請《ねだ》って、此処を一室《ひとま》借りましたが、借りた日にもうその手毬を取返され――私は取返されたと思うんですね――美しく気高い、その婦人《おんな》の心では、私のようなものに拾わせるのではなかったでしょう。
あるいはこれを、小川の裾の秋谷明神へ届けるのであったかも分らない。そうすると、名所だ、という、浦の、あの、子産石をこぼれる石は、以来手毬の糸が染まって、五彩燦爛として迸る。この色が、紫に、緑に、紺青に、藍碧に波を射て、太平洋へ月夜の虹を敷いたのであろうも計られません、」
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