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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 長い月日の事でござりますから、里の人たちは私らが事を、人に子だねを進ぜるで、二人が実を持たぬのじゃ、といいますがの、今ではそれさえ本望で、せめてもの心ゆかしでござりますよ。」
 とかごとがましい口ぶりだったが、柔和なに顰みも見えず、温順に莞爾して、
 「御新造様がおありなさりますれば、御坊様にも一かさね、子産石《こうみいし》を進ぜましょうに……」

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