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 『婦系図』 青空文庫

 酒井はどこか小酌の帰途《かえり》と覚しく、玉樹一人縁日の四辺《あたり》を払って彳んだ。またいつか、人足もややこの辺《あたり》に疎《まばら》になって、薬師の御堂の境内のみ、その中空も汗するばかり、油煙が低く、露店《ほしみせ》の大傘《おおがらかさ》を圧している。
 会釈をしてわずかに擡《もた》げた、主税のを、その威のある目で屹と見て、
「少《わか》いものが何だ、端銭《はした》をかれこれ人中で云っている奴があるかい、見っともない。」

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