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 『人魚の祠』 青空文庫

(見て貰えたいものがあるで、最《も》う直ぢやぞ。)と、首をぐたりと遣りながら、横柄に言ふ。……何と、其の両足から、下腹《したばら》へ掛けて、棕櫚の毛の蚤が、うよ/\ぞろ/\……赤蟻の列を造つてる……私は立窘《たちすく》みました。
 ひら/\、と夕空の雲を泳ぐやうに柳の根から舞上つた、あゝ、其は五位鷺です。中島の上へ舞上つた、と見ると輪を掛けて颯《さつ》と落した。
(ひい。)と引く婦《をんな》の声。鷺は舞上りました。翼の風に、卯の花のさら/\と乱るゝのが、婦《をんな》が手足を畝らして、身を〓《もが》くに宛然《さながら》である。

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