検索結果詳細
『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫
「ヒ、ヒ、ヒ、空ざまに、波の上の女郎花《おみなえし》、桔梗《ききょう》の帯を見ますと、や、背負守《しょいまもり》の扉を透いて、道中、道すがら参詣《さんけい》した、中山の法華経寺か、かねて御守護の雑司《ぞうし》ヶ谷《や》か、真紅《まっか》な柘榴《ざくろ》が輝いて燃えて、鬼子母神《きしもじん》の御影《みえい》が見えたでしゅで、蛸遁《たこに》げで、岩を吸い、吸い、色を変じて磯へ上った。
沖がやがて曇ったでしゅ。あら、気味の悪い、浪がかかったかしら。……別嬪《べっぴん》の娘の畜生め、などとぬかすでしゅ。……白足袋をつまんで。――
105/257
106/257
107/257
[Index]