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 『五大力』 従吾所好

 ――其の上覧の時や如何に。何時の催しにも、恁ばかりと思ふ、森厳なる威儀を正して、黒小袖、勝色小袖、十の袂、袴の色々、五ツの綾、黛同じ上〓〈らふ〉が、冷たき霜の橋がかりを、雲の深山の松の影。二の松、三の松かけて、足に落葉の塵もなく、墨絵の天女の俤揃へて、錦の帳〈とばり〉を出でたるぞ。浮草小町は誰ならむ。
 就中〈なかにも〉、新孫六兵衛が七十五歳の端麗さよ。
 驚かれたのは其のみならず、見物の釣船弥矢衛門。此の爺様、肩に掛けて、風呂敷づつみ持参なり。平時〈いつも〉は経師屋が内職ゆゑ、孫六が予て註文の狸の表装出来〈しゆつたい〉か、と思ふと違つた。……麻上下の紋着である。――これは臆病口へ、すいと廻る。

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