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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 一体東海道掛川の宿から同じ汽車に乗り組んだと覚えて居る、腰掛の隅に頭を垂れて、死灰の如く控へたから別段目にも留まらなかつた。
 尾張の停車場で他の乗組員は言合せたやうに、不残下りたので、函の中には唯上人と私と二人になつた。
 此の汽車は新橋を昨夜九時半に発つて、今夕敦賀に入らうといふ、名古屋では正午だつたから、飯に一折の鮨を買つた。旅僧も私と同じく其の鮨を求めたのであるが、蓋を開けると、ばら/\と海苔が懸つた、五目飯の下等なので。

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