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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
車輪の如き大さの、紅白段々《だんだら》の夏の蝶、河床は草にかくれて、清水のあとの土に輝く、山際に翼を廻すは、白の脚絆、草鞋穿、かすりの単衣のまくり手に、その看板の洋傘《こうもり》を、手拭持つ手に差翳した、三十《みそじ》ばかりの女房で。
あんぺら帽子を阿弥陀かぶり、縞の襯衣《しゃつ》の大膚脱、赤い団扇を帯にさして、手甲、甲掛厳重に、荷をかついで続くは亭主。
店から呼んだ姥の声に、女房が一寸会釈する時、束髪《たばねがみ》の鬢が戦いで、前を急ぐか、そのまま通る。
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