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 『日本橋』 青空文庫

 平時と違って、妙に胸がどきつくのさ。頭の頂上へ円髷をちょんと乗せた罪の無いお鹿の女房が、寂寞した中へお客だから、喜んで莞爾々々するのさえ、どうやら意見でもしそうでならない。
 飯は済んだ、と云うのは、上野から電車で此地へ来る前に、朋達三人で、あの辺の西洋料理で夕飯を食べた。そこで飲んでね、もう大分酔っていたんです。可訝くふらふらするくらい。その勢で、かッとなる目の颯とい中へ、稲妻と見たサの字なんだ。

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