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 『婦系図』 青空文庫

 車掌台からどやどやと客が引込む、直ぐ後へ――見張員に事情を通じて、事件を引渡したと思われる――車掌が勢《いきおい》なく戻って、がちゃりと提革鞄《さげかばん》を一つ揺《ゆす》って、チチンと遣ったが、まだ残惜そうに大路に半身を乗出して人だかりの混々《ごたごた》揉むのを、通り過ぎ状《ざま》に見て進む。
 と錦帯橋の月の景色を、長谷川が大道具で見せたように、ずらりと繋《つなが》って停留していた幾つとない電車は、大通りを廻り舞台。事の起った車内では、風説《うわさ》とりどり。

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