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 『婦系図』 青空文庫

 そうおっしゃれば、あの掏られた、と言いなさる洋服《ふく》を着た方も、おかしな御仁でござりますよ。此娘《これ》の貴下《あなた》、(と隣に腰かけた、孫らしい、豊肌《ぽってり》した娘の膝を叩いて、)簪《かんざし》へ、貴下、立っていてちょいちょい手をお触りなさるでございます。御仁体が、御仁体なり、この娘《こ》が恥かしがって、お止しよ、お止しよ、と申しますから、何をなさる、と口まで出ましたのを堪《こら》えていたのでござりますよ。お止しよ、お祖母さんと、その娘はまた同じことをここで云って、ぼうとくなる。

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