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 『春昼』 泉鏡花を読む

 と此方は敷居越に腰をかけて、此処からも空に連なる、海の色より、より濃な霞を吸つた。
「真個に、結構な御堂ですな、佳い景色ぢやありませんか。」
「や、最う大破でござつて。おもりをいたす仏様に、恁う申し上げては済まんでありますがな。はゝは、私力にもおいそれとは参りませんので、行届かん勝でございますよ。」

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