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 『天守物語』 泉鏡花を読む

朱の盤 これは、岩代国会津郡十文字ヶ原青五輪《あをごわ》のあたりに罷在《まかりあ》る、奥州変化《へんげ》の先達、允殿館《いんでんくわん》のあるじ朱の盤坊でござる。即ち猪苗代の城、亀姫君の御供をいたし罷出《まかりで》ました。当お天守富姫様へ御取次を願ひたい。
簿 お供御苦労に存じ上げます。あなた、お姫様は。
朱の盤 (真仰向《あをむ》けに承塵《てんじやう》を仰ぐ)屋の棟に、すでに輿《かご》をばお控えなさるゝ。

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