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 『木の子説法』 青空文庫

 走りはしません、ぽたぽたぐらい。一人児《ひとりっこ》だから、時々飲んでいたんですが、食が少いから涸《か》れがちなんです。私を仰向《あおむ》けにして、横合から胸をはだけて、……まだ袷《あわせ》、お雪さんの肌には微《かす》かに《くれない》の気《け》のちらついた、春の末でした。目をはずすまいとするから、弱腰を捻《ひね》って、髷《まげ》も鬢《びん》もひいやりと額にかかり……白い半身が逆になって見えましょう。……今時……今時……そんな古風な、療治を、禁厭《まじない》を、するものがあるか、とおっしゃいますか。ええ、おっしゃい。そんな事は、まだその頃ありました、精盛薬館、一二《おいちに》を、掛売で談ずるだけの、余裕があっていう事です。

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