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『日本橋』 青空文庫
盛の牡丹の妙齢ながら、島田髷の縺れに影が映す……肩揚を除ったばかりらしい、姿も大柄に見えるほど、荒い絣の、いささか身幅も広いのに、黒繻子の襟の掛った縞御召の一枚着、友染の前垂、同一で青い帯。緋鹿子の背負上した、それしゃと見えるが仇気ない娘|風俗、つい近所か、日傘も翳さず、可愛い素足に台所|穿を引掛けたのが、紅と浅黄で羽を彩る飴の鳥と、打切飴の紙袋を両の手に、お馴染の親仁の店。有りはしないが暖簾を潜りそうにして出た処を、捌いた褄も淀むまで、むらむらとその腕白共に寄って集られたものである。
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