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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
いずれそれも、怪しき事件《こと》の一つであろう。……あわれ、この少《わか》き人の、聞くが如くんば連日の疲労《つかれ》もさこそ、今宵は友として我茲に在るがため、幾分の安心を得て現なく寝入ったのであろう、と小次郎法師が思うにつけても、蚊帳越に瞻らるるは床の間を背後《うしろ》にした仄白々とある行燈。
楽書《らくがき》の文字もないが、今にも畳を離れそうで、裾が伸びるか、燈が出るか、蚊帳へ入って来そうでならぬ。
そういえば、掻き立てもしないのに、明の寝顔も、また悪く明るい。
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