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 『日本橋』 青空文庫

 私の父親は医師だったんだよ。……と云うお医師も、築地、本郷、駿河台は本場だけれども、薬研堀の朝湯に行って、二合半引掛けてから脈を取ったんだそうだから、医師の方では場違いだね。
 広袖を着たまま亡くなると、看病やつれの結び髪を解きほぐす間も無しに、親も後を追う。
 姉は二十、私は十三、妹は十一で、六十を越して祖母さんが、あとに残った……私と妹は奉公に出たんです。

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