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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
来方《こしかた》は我にもあり、但御身は髪黒く、顔白きに、我は頭《かしら》蒼く、面《つら》の黄なるのみ。同一《おなじ》世の孤児《みなしご》よ、と覚えずはふり落ちた法師自身の同情の涙の、明の夢に届いたのである。
四辺《あたり》を見ると、この人目覚めぬも道理こそ。雨の雫の、糸の如く乱れかかるのは、我が身体《からだ》ばかりで、明の床には、夜をあさる蚤もおらぬ。
南無三宝、魔物の唾《つば》じゃ。
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