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 『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

 はらりと、やや蓮葉《はすは》に白脛《しらはぎ》のこぼるるさえ、道きよめの雪の影を散らして、膚《はだ》を守護する位が備わり、包ましやかなお面《おもて》より、一層世の塵《ちり》に遠ざかって、好色の河童の痴《たわ》けた目にも、女の肉とは映るまい。
 姫のその姿が、正面の格子に、銀色の染まるばかり、艶々《つやつや》とった時、山鴉《やまがらす》の嘴太《はしぶと》が――二羽、小刻みに縁を走って、片足ずつ駒下駄《こまげた》を、嘴《くちばし》でコトンと壇の上に揃えたが、鴉がなった沓《くつ》かも知れない、同時に真黒《まっくろ》な羽が消えたのであるから。

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