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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 何矢張道は同一で聞いたにも見たのにも変はない、旧道は此方に相違はないから心遣りにも何にもならず、固より歴とした図面というて、描いてある道は唯栗の毬の上へ赤い筋が引張つてあるばかり。
 難儀さも、も、毛虫も、鳥の卵も、草いきれも、記してある筈はないのぢやから、薩張と畳んで懐に入れて、うむと此の乳の下へ念仏を唱へ込んで立直つたは可いが、息も引かぬ内に情無い長虫が路を切つた。

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