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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 其処でもう所詮叶はぬと思つたなり、これは此の山の霊であらうと考へて、杖を棄てて膝を曲げ、じり/\する地に両手をついて、
(誠に済みませぬがお通しなすつて下さりまし、成たけお午睡の邪になりませぬやうに密と通行いたしまする。
 御覧の通り杖も棄てました。)と我折れ染々と頼んで額を上げるとざつといふ凄じい音で。

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