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『日本橋』 青空文庫
その左右の欄干の、向って右へ、嫋娜と掛って、美しい片袖が見える。ト頬杖か何か、物思わしい風情で、熟とこっちを視めるらしい、手首が雪のように、ちらりと見えるのに、顔は榎に隠れたんだ。榎はどこか、深山の崖か、遠い駅路の出入境に有る、繁った大な年|経る樹らしい。
そこへね、むくむくと動いて葉を分けて、ざわざわと枝を踏んで、樵夫が出て来た。花咲爺の画にあるような、ああ、」
と横を向いて卓子台を幽に拊って、
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