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 『薬草取』 青空文庫

 台所から、中の室《ま》から、玄関あたりは、ばたばた人の行交《ゆきか》う音。尤《もっと》も帯をしめようとして、濃いお納戸《なんど》の紋着に下じめの装《なり》で倒れた時、乳母が大声で人を呼んだです。
 やがて医者《せんせい》が袴《はかま》の裾《すそ》を、ずるずるとやって駈け込んだ。私には戸外《おもて》へ出て遊んで来いと、乳が言ったもんだから、庭から出たです。今も忘れない。何とも言いようのない、悲しい心細い思いがしましたな。」

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