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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 何しろ山霊感応あつたか、蛇は見えなくなり暑さも凌ぎよくなつたので、気も勇み足も捗取つたが、程なく急に風が冷たくなつた理由を会得することが出来た。
 といふのは目の前に大森林があらはれたので。
 世の譬にも天生峠は蒼空に雨が降るといふ、人の話にも神代から杣が手を入れぬ森があると聞いたのに、今では余り樹がなさ過ぎた。

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