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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 此の折から聞えはじめたのは哄といふ山彦に伝はる響、丁度山の奥に風が渦巻いて其処から吹起る穴があいたやうに感じられる。
 何しろ山霊感応あつたか、は見えなくなり暑さも凌ぎよくなつたので、気も勇み足も捗取つたが、程なく急に風が冷たくなつた理由を会得することが出来た。

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