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『日本橋』
青空文庫
「あら、お店の前の袖垣に、朝顔の咲いた、撫子の綺麗だった、千草煎餅の、知っていますとも――まあ、お見それ申して済まないことねえ。」
はずんだ声も夜とともに沈んで聞えて静である。
「滅相な、何の貴女。お忘れ下さるのが功徳でござりますよ、はい、でも私はざっとお見覚え申しております、たしか……滝の家さんのお妹御……」
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