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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 黒髪かけて、襟かけて、月の雫がかかったような、裾は捌けず、しっとりと爪尖き軽く、もののいて腰を捧げて進むる如く、底の知れない座敷をうしろに、果なき夜の暗さを引いたが、歩行《ある》くともなく立寄って、客僧に近寄る時、何時の間にか襖が開くと、左右に雪洞《ぼんぼり》が二つ並んで、敷居際に差向って、女の膝ばかりが控えて見える。そのいずれかが狗の、と思いをめぐらす暇もない。

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