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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 僧は前に彳んだのを差覗くように一目見て、
 「わッ、」
 とばかりに平伏《ひれふ》した。実《げ》にこそその顔《かんばせ》は、爛々たる銀《しろがね》の眼一双《ひとなら》び、眦に紫の隈暗く、頬骨のこけた頤蒼味がかり、浅葱に窩んだ唇裂けて、鉄奬《かね》着けた口、柘榴の舌、耳の根には針の如き鋭《と》き牙を噛んでいたのである。

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