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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 一旦助けむと思ひ込みたる婦人《をんな》なれば、此儘にて寐入らむは口惜し。この血の跡を慕ひ行かば其行先を突留め得べきが、単身《ひとりみ》にては気味悪しと、一まづ家に立帰りて、近隣の壮佼《わかもの》の究竟《くつきよう》なるを四人ばかり語らひぬ。
 各々興ある事と勇み立ち、読本《よみほん》でこそ見たれ、婦人といへば土蜘蛛に縁あり。さしづめ我等は綱、金時、得右衛門の頼光を中央《まんなか》にして、殿《しんがり》に貞光季武、それ押出せと五人にて、棍棒《よりぼう》、鎌など得物を携へ、鉢巻しめて動揺《どよ》めくは、田舎茶番と見えにけり。

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