検索結果詳細


 『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

 土手の松へは夜鷹が来る。築土《つくど》の森では木兎《ずく》が鳴く。……折から宵月の頃であった。親雀は、可恐《おそろし》いものの目に触れないように、なるたけ、葉の暗い中に隠したに違いない。もとより藁屑も綿片《わたぎれ》もあるのではないが、薄月が映すともなしに、ぼっと、その仔雀の身に添って、霞のような気が籠って、包んで円く明かったのは、親の情の朧気《おぼろげ》ならず、輪光を顕わした影であろう。「ちょっと。」「何さ。」手招ぎをして、「来て見なよ。」家内を呼出して、両方から、そっと、を差寄せると、じっとしたのが、微《かすか》に黄色な嘴を傾けた。この柔な胸毛の色は、さし覗いたものの襟よりも白かった。

 13/143 14/143 15/143


  [Index]