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 『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

 かばかりの大石投魚《おおいしなぎ》の、さて価値《ねうち》といえば、両を出ない。七八十銭に過ぎないことを、あとで聞いてちと鬱《ふさ》いだほどである。が、とにかく、これは問屋、市場へ運ぶのではなく、漁村なるわが町内の晩のお菜《かず》に――荒磯に横づけで、ぐわッぐわッと、自棄《やけ》に煙を吐く艇《ふね》から、手鈎《てかぎ》で崖肋腹《がけあばら》へ引摺上《ひきずりあ》げた中から、そのまま跣足《はだし》で、磯の巌道《いわみち》を踏んで来たのであった。

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