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 『歌行燈』 従吾所好

「それ、其処が其れ捻平さね。松並木で出来たと云つて、何もごまのはひには限るまい。尤も若い内は遣つたかも知れんてな。はゝは、」
 人も無げに笑ふ手から、引手繰るやうに切符を取られて、はつと駅夫のを見て、きよとんと生真面目。
 成程、此の小父者〈をぢご〉が改札口を出た殿〈しんがり〉で、何をふら/\道草したか、汽車は最〈も〉う遠くの方で、名物焼蛤の白い煙を、夢のやうに月下に吐いて、真蒼な野路を光つて通る。……

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