検索結果詳細


 『日本橋』 青空文庫

「はい、あちらの姉さんも、あの御気象で、よく可愛がって下さいます、が、願えますものならば、貴女のお手許に、とその時も思った事でござります。いいえ、不足を言うではござりません。芸者と一概に口では云い条、貴女は、それこそれっきとした奥方様も同じ事。一人の旦那様にちゃんと操をお守りなされば、こりゃ天下一本筋の正しい道をお通りなさる、女の手本でござります。彼娘にもな、あやからせとう存じますので。」
「飛んでもない、お孝さんこそ可い姉さん。ああでなくては不可ません。私は何も、曲んだり拗ねたりして、こう云うのではないんです。お爺さん、色でも恋でもない人に、立てる操は操でないのよ。……一人に買われる玩弄品です。大人の手に遊ばれる姉さま人形も同じ事。」

 1418/2195 1419/2195 1420/2195


  [Index]